久々にブログを復旧させた謎の人のブログ

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食蜂「好きって言わせてみせるわぁ」その3

その3です

212: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/05(金) 23:13:28.27 ID:dV7ANrxL0
――オセアニアエリア


食蜂(……あぁ、……どうして、こんな)カタカタ


上条「……はぁ、はっ、はぁ」ヨロ

猟犬B「すげえすげえ、片足が使えねえのに、存外動けるもんだなぁ」ニヤニヤ

猟犬A「極度の緊張からくるアドレナリンで痛みを遠ざけているだけだ。遊んでないで早くしろ」

上条「……くっ、そ」

猟犬B「おんやぁ? なんだぁ? その目は」

猟犬B「てめえが抵抗したらAが女を撃ち殺す。女が妙な真似したらてめえを殺す。忘れてねえよなぁ?」

上条「……ッ」ギリッ

白衣男「んー、なんかこう、表情に面白味が足りねえなぁ」

猟犬B「だったら、こうすれば、どうかなッ!」クン

上条(……ッ! 足の軌道が変わっ――)


――ズガッ!


上条「ぎっ、あああああガァァァアッッッ!!!」

食蜂「~~ッ!」ゾグン

213: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/05(金) 23:16:31.22 ID:dV7ANrxL0
猟犬B「おっし、完璧決まったぁ」ビシッ

上条(――き、傷口を狙っ――い、ぎッッ!)ビクビク

食蜂「……あ、あぁ……」カタカタ

白衣男「なかなか我慢強いお兄ちゃんみたいだが」

白衣男「刺されたばかりの箇所に爪先を突っ込まれたら、忍耐なんて簡単に吹き飛んじまうかぁ」

上条「……かっ……ひゅっ」ゼェゼェ

食蜂「なんっ、なんてひどいことすんのよぉッ!」

白衣男「って、オイオイ、見てるだけの俺を怒るのは筋違いだろぉ」

猟犬B「だいたいこの傷で本職とやり合おうとするなんざ、世の中舐めすぎっつうか?」

猟犬A「ま、こういう世間知らずのヒーロー気取りには、きっちりお灸をすえてやらんとなぁ」

上条「……はぁ……ぁ」ドクドク

上条(……まず……い。止まりかけてた血が……また)グッタリ

白衣男「おー、一気に口数が減ったなぁ。まさに顔面蒼白ってやつだぁ」

白衣男「よぅし、どんどんいこう」ピッ

猟犬B「了解」シュッ

食蜂「や、やめてッッ!!」

214: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/05(金) 23:17:06.32 ID:dV7ANrxL0
――ドゴッ――ズガッ――ズンッ!


上条「ぐっ!――がはっ!――あっ……あぁっ!」ビクビク

食蜂「……い、いや。やだ、やだぁ、本当に死んじゃう」ウルウル

猟犬B「はぁ、意外と蹴るのも大変だな。こっちの足が疲れてきたぜ」

白衣男「時間も余裕ねえし頃合いかぁ。さぁて、別嬪の嬢ちゃん、取引と行こうか」グイ

上条「……う」ダラン

食蜂「と、取引……って」

白衣男「彼が何故こんな目に遭ってるのか考えてみたらいい。その原因はぁ?」

食蜂「そ、それは……」

食蜂(……全部、私の)グッ


上条「聞く……な」


食蜂「……ッ」クル

上条「俺なら……いくらだって……堪えられる、から」ググ

食蜂(か……上条さん……)

猟犬A「……まだんな口が叩けるのか。ガキにしちゃ大した根性だな」

猟犬B「あるいは本当に、仲間が助けに来るまで耐えちまいそうっすねぇ」

白衣男「ばぁか、その前におっちぬだろ」

食蜂「も、もう彼はいいでしょ! 私は、何をすればいいのよぉ!」

215: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/05(金) 23:17:57.95 ID:dV7ANrxL0
白衣男「あらぁ、残念だったなー、お兄ちゃん。彼女の方が先に限界来ちまったってよぉ」

食蜂「……う……うぅ」ポロポロ

上条「……しょ、食……ほ――ごふっ!」ドス

食蜂「ひっ!」ビクン

猟犬B「誰が喋っていいって許可したんだよ、あぁ?」

食蜂「やっ、やめてって言ったじゃなぁい! おっ、お願いよぉ!」

猟犬B「健気だねぇ、まるで自分が痛めつけられてるみたいに震えちゃって」

猟犬A「でも惜しいなぁ、まだ何かが足りないんじゃないかぁ」

食蜂「……な、何かって、何よぉ」ヒック

白衣男「お詫びだよ。こそこそ隠れてお手間を取らせて済みませんでしたって謝るのが先だろぉ」

上条「……な、ん」ググ

白衣男「君が言葉を直さず、リモコンを手放さなかった場合、5秒ごとに彼の手足があらぬ方向に曲がる」

白衣男「まぁもっとも? それでも彼は我慢してしまうかも――」


――カシャン


白衣男「って、即捨てかぁ。風情がねえなぁ」ハァ

食蜂「……も、申し訳、ありません、でした」

216: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/05(金) 23:19:10.51 ID:dV7ANrxL0
上条「や……めろ、食……蜂……」

食蜂「……もういい。もう、十分だから」

食蜂「私の見込みが、甘すぎたせいで、こんな」

食蜂「……これ以上あなたが傷つけられるのは、無理、無理なのよぉ」ブワ

白衣男「そうかそうか、あー良かったわぁ」

白衣男「いやぁ、無関係な少年を無闇に傷つけるのは俺も辛くってさぁ」ポリポリ

上条「……くっ、なん……で」

白衣男「さぁさぁ、ぱぱっと土下座して忠誠を誓いなぁ。それで手打ちにしてやる」

上条「……なッ、て、てめえ――ぐっ!」グイ

猟犬B「いいとこだろ、黙って見てろ」

食蜂「……わか、りました」ザッ

217: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/05(金) 23:20:47.89 ID:dV7ANrxL0
猟犬A「くくっ、ずいぶんと聞き分けが良くなったな」

猟犬B「これなら依頼人も満足しそうっすね」

食蜂「……何でも言うことを聞きます。……何されたって我慢します」ザッ

白衣男「……ぷっ、くく、あはっ、何だぁ? 地べたに手ぇついて、額擦りつけて」

白衣男「これが超能力者、学園第五位様のやることかぁ?」カカカ

上条「や、やめろ……頼む、やめて、くれ」ググ

食蜂「……だ、だから」グスッ

食蜂「だから、お願いします。どうか」ポロポロ


食蜂『どうか、上条さんを、助けてください』


上条「……食……ほ……ぅッ」ガリッ

218: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/05(金) 23:22:42.48 ID:dV7ANrxL0
食蜂「…………」プルプル

白衣男「はーい、よく出来ましたー。みんな拍手ー」パンパン

猟犬B「おぉー、すげーすげー。プライドねえのかなー、俺だったら絶対できねえわ」パチパチ

食蜂「……う、うぅ」ポロポロ

上条「て、手前ら……」

猟犬A「んじゃあ早いとこ一緒に来てもらおうか。いいか、少しでももたついたらこのガキ――」



御坂「――うッ、らぁぁぁぁッッッ!!!」バッ


――バリバリバリィッ!


猟犬A「へ――――ぐがぁぁぁぁっァッッッ!!!」ビクビクビク

食蜂「……え」

猟犬B「……ッ!?」

白衣男「――なんだぁッ!?」 バッ

219: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/05(金) 23:27:01.12 ID:dV7ANrxL0
食蜂「……ぁ」

御坂「……、」スタッ

上条「み、みさ……か……」

食蜂「……御坂……さぁん」ポロポロ

御坂「……ったく、アンタともあろう女が、なんて顔してんのよ」ギリッ

食蜂「……だ、だって……だってぇ」プルプル

御坂「……あー、ったく、あんたがそんなんじゃ調子狂うわ」ガリガリ

猟犬B「な、なんだこいつ――能力者か!?」

白衣男「超電磁砲だ! 退くぞ!」

猟犬B「な……、レベル5の!?」

白衣男「仕事外の片手間っつうには割に合わんッ! 女を連れ帰るのが最優先だッ!」ヒュッ

食蜂「きゃあっ!?」グイッ

御坂「……ちょっと、往生際悪い男はみっともないわよ?」

白衣男「悪いが、こいつは遊びじゃないんでねぇ」ゴクンッ


御坂(……こいつ、今、何か飲んだ?)ジリッ

220: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/05(金) 23:29:57.47 ID:dV7ANrxL0
白衣男「さぁて、物は相談なんだが、このまま見逃してくれないかなぁ?」

御坂「冗談、ここまで好き勝手して逃がすと思ってんの……?」バチバチ

猟犬B「――せいっ!」ポイ

御坂「――手りゅう弾!?」

上条「……ぅ」

御坂(って、やばっ、アイツにモロに!)バチバチッ


――カッ!


御坂(しまっ、照明弾かッ!)バッ

食蜂「きゃっ、眩し……ッ!?」

白衣男「おら、来やがれ!」グイッ

食蜂「ちょっと、いやっ、離してっ! 下ろしてったらぁっ!」バタバタ

御坂「んのっ、舐めんじゃないわよ! 目が見えなくたっておよその位置は」

白衣男「」タッタッタッタ

御坂「って、いくらなんでも足早すぎじゃないっ!?」バチバチ

白衣男「ひゅうッ、危ねぇっ!」ピョン

御坂「――って、嘘っ、かわした!?」

221: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/05(金) 23:34:17.45 ID:dV7ANrxL0
白衣男「見境ねぇなぁ! この女も一緒に感電しちまうぞ!?」

御坂「その程度で済むならご愛嬌で、しょっ!」バチバチッ

白衣男「――とっ、うわっ! おっかねぇ!」ササッ

猟犬B「このっ!」ズガガガガ

御坂(……実弾!)クン


――ギュインッ!


猟犬B「って、銃弾の軌道を反らしやがった! マジもんの化物かよ!?」

白衣男「牽制できれば十分だ! このまま突っきるぞ!」

御坂(あの男はともかく、白衣のやつ。人ひとり抱えてあの動きって人間業じゃないわね)

御坂(だけどレールガンなら……いやいや、食蜂が無事じゃ済まないわね。普通なら追うべきなんだろうけど)

御坂(……半死人のコイツを、ここに放置していくわけにも)チラ


――パッ


黒子「お姉様! 救護隊員を連れてきましたの!」

御坂「――黒子!」

222: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/05(金) 23:35:51.94 ID:dV7ANrxL0
御坂「グットタイミング! 食蜂をさらった連中を尾行してッ! 白衣を来た男と軍服の男が首謀者よ!」

黒子「え……あ、はい! 了解ですのッ!」

御坂「いい? 相手の力は未知数だからくれぐれも慎重に、自分から手出そうとすんじゃないわよッ!」

黒子「心得てますわ、お姉様!」


――ヒュンッ!


御坂「……頼んだわよ、黒子」チラ

上条「……ぅ」ピク

救護隊員「……これは、ひどいな。一刻も早く輸血しないと」

御坂「た、助かりますよね?」

救護隊員「……すぐ近くまで救護車が来ていますので、歩道に入るよう要請します」 ピッピッピ

御坂(……気休めを迂闊に言えないくらいには、危ないってことか)ググ

御坂(到着がもう少し早ければもっとスマートに片づいたはずなのに)ギリ

御坂(なんでこいつがこんな目に遭わされてるときに、私はのんきに化粧直しなんてやってたのよ!)ダンッ

223: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/05(金) 23:39:18.45 ID:dV7ANrxL0
――駐車場


白衣男「ふぅ、やっと車が見えてきた」

猟犬B「後ろからは――良かった、追って来てないみたいっすね」

白衣男「瀕死の少年を放置するわけにもいかなかったんだろうさぁ。いやー、いい足止めになってくれたわぁ」

食蜂(……上条さん、どうか無事で)

食蜂(――後は……私ねぇ)チラ

猟犬B「ところで、Aは大丈夫でしょうか」

白衣男「あー、うん。あらゆる能力の可能性を考えれば、居場所は割れると思っておくべきだなぁ」

猟犬B「……は、はぁ。……そうっすよねぇ」


――バタン


猟犬C「隊長! お疲れ様です」

白衣男「おう、本当にお疲れだぁ」

猟犬C「あぁ、この女が今回の標的ですか」

白衣男「まぁな。洗脳装置の準備はできてるか?」

猟犬C「ええ、指向性の安定が課題ではありますが、近距離での運用なら問題ないでしょう」

食蜂「……」チラ

食蜂(……ヘッドバンド、していないわねぇ)

224: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/05(金) 23:46:33.36 ID:dV7ANrxL0
猟犬C「まぁ何はともあれ、無事確保できたなら御の字――って、あれ、Aはどこに」

白衣男「やられた。今も超電磁砲(レールガン)が追って来ている可能性がある」

猟犬C「……ッ、超電磁砲!?」

白衣男「わかったら急いで車を出せ、待機してる仲間には俺が伝える」

猟犬C「わ、わかりまし――!」


――ピッ!


猟犬C「――」ドンッ

白衣男「……うぉっ!?」バッ

食蜂「――痛ぅっ!」ドサッ

猟犬B「あっ、このガキ! まだリモコン持ってやがったのか!」

白衣男「……いやはや、胸にリモコン忍ばせるとか、B級スパイ映画の見すぎだなぁ」

食蜂「悪いけど、簡単に捕まるわけにはいかないのよぉ」

食蜂(私を助けられなかったら、あの人のことだし、絶対に悔やんじゃうわよねぇ)

225: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/05(金) 23:49:14.64 ID:dV7ANrxL0
猟犬B「……た、隊長」

白衣男「落ち着けぇ、そいつさえ抑え込めば」

食蜂「迎撃しなさい!」バッ

猟犬C「――リョウカイ」ヒュッ

猟犬B「うわっ! ……こ、こいつっ!」ガッ

白衣男「待て待てぇ、自分がさっき言ったこともう忘れたのかぁ? 何でも言うことを――」

食蜂「あんな脅迫まがいの約束、無効に決まってるでしょ?」

食蜂(そうよぉ、どれだけみっともない真似したって、最後に生き残れば――)

白衣男「ったく、図に乗るな、ガキが」ヒュンッ

食蜂「……えっ」


――ドムッ!


食蜂「ぐっ、……ふっ!?」カクン

白衣男「早まったなぁ。複数ならいざ知らず、一人味方につけたくらいで俺に敵うと思ったか?」

食蜂「……あぅ……あ゛っ」ビクン

食蜂(……まだ、よ。……せ、せめて……これだけ……は)プルプル


――ピッ!


白衣男「……何?」

226: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/05(金) 23:51:51.14 ID:dV7ANrxL0
食蜂「……ぅ――」ドサッ

白衣男「……なんだぁ? 今何をしやがった? ……B?」

猟犬B「い、いえ、俺に異常は――って、このっ! いい加減邪魔するなって!」バッ

猟犬C「――」ヒュン

白衣男「……はぁーん、気絶しても能力は有効なのね。厄介極まりねぇなぁ」カチャッ


――パンッ!


猟犬C「グッ――!?」グラ

猟犬B「……え」


――ドサッ


猟犬B「……あ、あの、これは」

白衣男「心配するなぁ。麻酔銃だ」

猟犬B「い、いや、でも、血が出て……」

猟犬C「……ぐ……ぅ」

白衣男「俺が麻酔銃だと言ったらそうなんだぁ。――違うか?」カチャッ

猟犬B「い、いえ、失礼しました!」

227: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/05(金) 23:54:56.28 ID:dV7ANrxL0
白衣男「んで、お前、本当に操られていないだろうなぁ?」カチャ

猟犬B「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!? 俺ヘッドギアしてるじゃないっすか!?」

白衣男「それを素通しした可能性も、あるいはゼロじゃないと見てるんだがなぁ」

猟犬B「そ、それこそ! ヘッドギアを無視できるならあのガキを痛めつけていた段階でやっていたんじゃないっすか?」

白衣男「……ふぅん、なるほど、まぁ、もっともな理屈だぁ」

猟犬B「無理に操ろうとしたが失敗した。そんなところっすよ、きっと」

白衣男「……かもなぁ。俺の気にしすぎか」チラ

白衣男(殴られた痛みで能力の発動を失敗した可能性もあるが、まぁどっちでもいいか)

食蜂「…………」グッタリ

白衣男「しばらく目が覚めなそうだな。好都合ではあるが」

猟犬B「そ、それよりも」

白衣男「……うん?」

猟犬B「い、いや、Cはどうすんのかなーって思って」

白衣男「……言っている意味がわからんなぁ? 運転手ならお前がいるだろ?」

猟犬B「あの、そういうことじゃ――――い、いえ、わかりました」

白衣男「ならとっとと運転席に座れ。車ごと洗脳装置を奪われたら目も当てられんからなぁ」

猟犬B「りょ、了解」

228: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/05(金) 23:55:32.50 ID:dV7ANrxL0
――ブロロォォ


食蜂「…………」

猟犬B「しっかしまぁ、とても中学生とは思えない体っすね」ゴクリ

白衣男「洗脳が終わるまでは手を出すなよぉ」

猟犬B「え、あ、いや」

白衣男「精神に支障をきたせば、コイツの能力に悪影響が出るかも知れん」

白衣男「以前瞬間移動能力者かなんかで、そういう実例があったそうだぁ」

猟犬B「ま、まだ何も言ってないじゃないっすか。やだなぁ」

白衣男「口にしなくとも顔に書いてある。品位が知れるなぁ」

猟犬B「いやぁ、どうも戦闘の後って昂ぶっちまうんですよねぇ」ポリポリ

白衣男「一方的にぶちのめして、一方的に攻撃されただけだろぉ?」

猟犬B「まぁ、そうなんすけど」

白衣男「洗脳が滞りなく終わったら、その後はどこでも好きに使うがいいさ。俺もそうさせてもらうつもりだ」

猟犬B「へへっ、さっすが隊長!」パチン

229: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/06(土) 00:03:48.55 ID:0KXDCNaB0
黒子「ええ、一人銃で撃たれました。そちらにも車を回してください」ヒュンッ

初春『了解しました。――あの」

黒子「何ですの?」

初春「いえ、白井さんも、くれぐれも気をつけてくださいね」

黒子「わかってますわ。お姉様にも忠告されましたし」パッ

初春『はい、じゃあまた』ピッ

黒子「……さて、空からですし、尾行は気づかれていないと思いますが」パタン

黒子(あの男、仲間にも容赦ないですわね。警戒に値しますの)ヒュンッ

黒子(さすがに追いながら車を止めるのは難しそうですわね。銃器持ちの相手が複数となると、わたくし一人では手に余りますし)パッ


黒子(っと、トンネルに入りましたわね――先に出口で待ち構えますか)ヒュンッ

230: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/06(土) 00:08:25.46 ID:0KXDCNaB0
――ざわざわ


御坂(……どういうことかしら、ドンパチが終わった途端に人が増えて来るだなんて)キョロ

救護隊員A「あまり揺らさないように、搬送中に血液パック2単位で」

救護隊員B「了解です」

救護隊員C「脈確保しました。輸血開始します」グッ

救護隊員B「えっと、付添いの方は」

御坂「……あ、あの、私付き添いです」

救護隊員A「わかりました。ご家族の方ですか? それとも、彼女さんとか」

御坂「あ、い、いえ! その……えっと、友達、です」アタフタ

御坂(って、あぁもう、何動揺してんのよ!)

救護隊員B「わかりました、一刻を争いますので、詳しい話は搬送中に聞かせていただきます」

御坂「は、はい!」

御坂(……そうよ、今はそれどころじゃない。切り替えなきゃ)

231: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/06(土) 00:09:47.75 ID:0KXDCNaB0
土御門「…………」

エツァリ「……あの、土御門さん」

土御門「戻るぞ、今さらのこのこ出ていく理由がねえ」

エツァリ「……わかりました。貴方がそれでいいなら」

一方「ったく、だせぇ。勝手に俺以外のやつにやられてンじゃねえよ」ギリ

エツァリ「……一方通行! その言い草はあまりにも」バッ

一方「ンだよぉ?」ジロ

土御門「やめろ」

エツァリ「……しかし」

一方「……ンだぁ? 文句があンのか?」

土御門「いいや? お前に期待しすぎた俺が馬鹿だったってだけの話だ」

一方「……な、ン」ピクッ

土御門「ぐだぐだやってる暇があんだったら御坂美琴に連絡を入れとけ。海原、番号知ってんだろ」

エツァリ「え……ええ、一応。それで用件は」

土御門「洗脳装置が無線で操れるものだってことまでは知らないはずだ。これ以上面倒事を増やしたくない」

エツァリ「……わ、わかりました」カチカチ

232: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/06(土) 00:15:07.30 ID:0KXDCNaB0
――う、ん。


上条(――あれ、ここ、どこだ?)


上条(見慣れた部屋、な気もするけど)


???「あっ、とうま、目が覚めたの?」

上条(……この声)


上条「……イン……デックス、か?」

上条(……れ? 首が、動かねえぞ?)ググ

インデックス「……良かった。今先生呼んでくるから、待ってて」スク

上条(……どころか、手足も……ろくに動かねえな)モゾ

インデックス「全身に麻酔が効いてるから、しばらくは動けないって先生言ってたよ」

上条「……俺、いったい」ボケー

上条(……インデックス、寝てないのか? 目に隈ができてる)

上条(……なんだろ、頭が……全然働かねえ)

インデックス「……とにかく今は何も考えないで、ゆっくり休むこと。わかった?」

上条「……ん」スゥ

インデックス「さ、とうま、目瞑って。そしたら、もっと元気になってるから」

233: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/06(土) 00:18:10.69 ID:0KXDCNaB0
――翌日


上条「……やっぱり病院、か」

御坂「あ、起きたんだ?」

上条「……御坂? なんでお前がここに」

御坂「お見舞いよ。いちゃ悪い?」

上条「い、いや、そんなことはねぇけど」

上条(……駄目だ、記憶が途切れちまってる。何がどうなってるんだ?)

御坂「……今度こそ、本気で死んじゃうかと思った」

上条「……誰が?」

御坂「アンタよアンタ。全身真っ青でここに運ばれてきたの。どうせ覚えてないだろうけど」

上条「運ばれて……って」

御坂「……動物園から」

上条「……動物」


食蜂『どうか、上条さんを、助けてください』


上条「――食蜂ッ!」ガタッ

御坂「……ッ」

234: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/06(土) 00:21:56.91 ID:0KXDCNaB0
上条「あ、あいつはどうなったんだ!? なぁ、無事――いづッ!」ズキンッ

御坂「ちょっと、まだ安静にしてなきゃ!」バッ

上条「お、俺、あいつにあんな真似させちまって……謝らなきゃ。なぁ、どこに――」

御坂「いいから、落ち着けってのッ!」ガシッ

上条「……ッ」ビクッ

御坂「……瀕死の状態だったのよ? 人の心配するなとは言わないけどちょっとは自分も省みたらどうなのよ!」

上条「……わ、悪い」

御坂「あの外国人の女の子、イン、何とかって言ったかしら? 病室で一晩中あんたのために祈ってたらしいわよ?」

上条「……え」

御坂「そんなに心配してくれる人がいるんだったら、自分のことだって大事にしなきゃダメでしょ?」

御坂「少なくとも私は、あんたにそれを教えられたつもりだったんだけど?」

上条「す、すまん。……頭に血が上ってた」

御坂「だとしたら、輸血した量が多すぎたってことかしらね?」プンッ

235: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/06(土) 00:27:59.56 ID:0KXDCNaB0
上条「……本当、悪かった」

御坂「……あー、もう、何で病人に説教しなきゃいけないのよ!」プイッ

上条「は、反省してるって。それより――あいつは」

御坂「……はぁ、まぁいいわ。今さら隠しきれるのも無理だし」

上条「……何の話だ?」

御坂「窓の外」ビッ

上条「……窓?」

御坂「飛行船のテロップ、見えるでしょ」

上条「飛行船……って、あぁ、あれのこと――」


飛行船『臨時ニュースです。学園都市第五位の超能力者、食蜂操祈さんが何者かに拉致され、現在も行方不明になっていることが――』


上条「――――」

御坂「つまり、そういうことよ。あの時駆けつけておきながらこの体たらく」


御坂「存分に、なじってもらって構わないわ」

236: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/06(土) 00:30:31.13 ID:0KXDCNaB0
――バタン


黒子「お姉様……」

御坂「黒子、風紀委員は終わったの?」

黒子「ええ、目下警備員と共同で、全力で捜索に当たっておりますの」

御坂「ごめんね、こんな面倒事につき合わせちゃって」ペコ

黒子「お気遣いなく、母校の同輩のためですもの。力を惜しむ理由はありませんわ」

御坂「ん、ありがと」

黒子「それより、上条さんのご様子は――」

御坂「いやー、それが、意外と普通っていうか」

黒子「あら、そうなんですの?」

御坂「それなりにショックは大きかったみたいだけど、あんまへこたれてないみたい」

御坂「アイツとことん世話焼き気質っつうか、どうしようもなくお節介だからさ」

御坂「てっきり全責任自分一人で背負いこむんじゃないかって思ってたんだけど」

黒子「そうですか。でしたら何よりですわね」

御坂「まぁ、前向きすぎるのも問題よね。あの体で無理されてもこっちが気疲れしちゃうし」

御坂「ベッドの上で変に気を揉まないよう、とっととあの女を取り戻さなきゃ」

237: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/06(土) 00:31:18.24 ID:0KXDCNaB0
黒子「あの、ところで」モジモジ

御坂「うん?」

黒子「尾行の件、申し訳ありませんでした。まさか同じ車を三台も用意していたとは」

御坂「ううん、無事戻って来てくれてよかった。黒子の身にまで何かあったら、私こんな冷静じゃいられなかったわ」

黒子「お、お姉様……///」キュン

御坂「車の動きなら衛星で追えてるはずだし、協力者だって大勢いる。じきに目星は付くわ、きっとね」

黒子「そうですわね。それで、あの」

御坂「うん?」

黒子「食蜂さんが洗脳されているかもって話。本当なんでしょうか?」

御坂「そこは疑っていないわ。洗脳装置の話についてもやたら具体的だったし」

御坂「もっとも、電磁バリアがある私にとっては、人払いのなんちゃらっていう方が問題だけど」

黒子「……何となくその場に近寄らないようにする。そんな催眠術のようなこと、能力なしでできるんですのね」

御坂「タネがわかった以上、同じ轍はもう踏まない。今度こそ、あの連中を焼き尽くしてやるわ」パチン

黒子「お姉様、病院で電磁波はご法度ですわよ」ジト

御坂「あ、ゴメン、つい」アセッ

238: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/06(土) 00:32:47.67 ID:0KXDCNaB0
――病室


黒子「失礼します」パタン

上条「……ん? あぁ、白井も来てくれたのか」

黒子「どうも、顔色もすっかり元通りですわね」

上条「お陰様で。本当にありがとな」

黒子「……何の話ですの?」キョトン

上条「お前が瞬間移動で救急隊員連れてきてなかったら、出血多量で多臓器不全になってたかもって。命の恩人だ」

黒子「ならこれでチャラですわね、いつぞやの件では私が助けていただきましたし」

上条「はは、了解」

上条「ところで、御坂はもう帰ったのか?」キョロ

黒子「先ほど寮監様に連絡するからと言って外に出られました。院内では携帯禁止ですから」

上条「あぁ、そうか。先生にも食蜂を連れ出したこと謝らないとな」

239: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/06(土) 00:35:10.29 ID:0KXDCNaB0
黒子「……あの、これは私見ですけれども」

上条「……?」チラ

黒子「あそこまで用意周到にやられては、出かけようと出かけまいと攫われた可能性が高かったかと」

上条「だとしても、だよ」

黒子「まぁ、気に病むなという方が無理なこともあるでしょうけども」

黒子「とにもかくにも、あなたは一刻も早く怪我を治すことが先決ですの」

上条「そうなんだけど、すっきりしないっつうかな」

黒子「食蜂さんの奪還に向けて、警備員や風紀委員も動いていますわ。それにお姉様だって」

上条「結局、全部他に丸投げか。アイツにも、ずいぶんと迷惑かけちまったな」

黒子「迷惑よりは心配の方が比重はずっと大きいようでしたわよ?」

上条「……わかってる、後で謝っとくよ」

黒子「謝るよりは、お礼にしていただきたいですわね」

240: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/06(土) 00:36:07.70 ID:0KXDCNaB0
上条「ふぅ……よっこらせっと」ドサッ

黒子「あぁ、気が利きませんで。朝から見舞い客が引っきりなしだったそうで、お疲れですわよね」スク

上条「いや、寝すぎてダルいだけ。むしろトイレ行きたいんだよな」

黒子「おまるならそこにありますわよ?」チラ

上条「いやいやいや、普通に便器に座って踏ん張りたいんですよ」

黒子「そのように力まれても力説されても困りますの」

上条「つか、血が通ってなかっただけで、ほら、左足以外はもう全然動くみたいな?」グルングルン

黒子「元気アピールならお医者様か看護師様にどうぞ」ツン

上条「ダ、ダメですか? 病室でリアルな排泄音とか思春期少年の心を滅多打ち――」

黒子「……はぁ、わかりました。看護師さんの巡回までには戻ってきてください」

上条「さんきゅ、ちょっくら行ってくるわ――って、うわ!」ガタン

黒子「点滴は倒さぬようお気をつけあそばせ」ジト

241: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/06(土) 00:36:49.75 ID:0KXDCNaB0
――15分後


黒子「……遅すぎる。いったい何をやっていますのよ」プリプリ

黒子(まぁ、点滴をしたまま用を足すのは意外と難儀しますし)

黒子(長時間じっとしていれば便秘にもなりそうなものですけれど)

黒子(…………)

黒子「……いやいや、まさか、歩くのがやっとの体で脱出など」テクテクテク

黒子「この時間は病院も混雑してますし、抜け出そうとしたところで誰かに見つかるのがオチ――」

黒子(と、ここが最寄のトイレですわね)チラ


???「――く……しょ」


黒子(あら、今の声って――)


――ドンッ!


黒子「……ッ」ビクッ

242: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/06(土) 00:39:53.20 ID:0KXDCNaB0
黒子(い、今のは、何の音ですの?)

黒子(中から、聞こえてきたような……)


???「……なん……目……前で、こん……な」


黒子(……あ)


???「……女の……に……土下座……ん、で」ドンッ


???「――ぐッ! ――ッッ!!」ドンッドンッ


――ダンッ!


???「……っそ………っくしょぉッッ!!」


???「――う、うぁ……ぁあっあぁぁっぁあ――」ガシッガシッ


黒子(…………)


黒子(……はぁ、まったく、殿方というものは)


黒子(聞きつけたのがお姉様でなくて幸いしましたわ)クルッ


黒子(……出すものを出し切るまでには、まだ時間がかかりそうですわね)チラ


黒子(病室に戻る前に、飲み物でも買い出しにいきますか)ヒュンッ

243: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/06(土) 00:48:43.97 ID:0KXDCNaB0
――窓のないビル


アレイスター「まずは、言い訳を聞こうか」

土御門「…………」

アレイスター「……だんまりというのは、私はあまり好きじゃない」

アレイスター「そもそも述べるべきは『これからどうするか』であって、『何故こうなったか』を延々と説明する必要はない」

アレイスター「しかし、敢えて問題視せざるを得ない事情がこちらにはある。わかっているとは思うが――」

土御門「重要な護衛対象を守れきれなかった。全責任は俺にある」

アレイスター「……通り一遍の文言を聞くために面会したわけではないのだがね」

アレイスター「確かに、彼女は大切なリカバー役だ。重大な事件の際、学園を去らんとする能力者を留め置くための」

アレイスター「君たちの情報提供が意図的に伏せられていたせいで、こうした事態を招いたのだとしたら――」

土御門「それは、断片的な情報ばかりで実態がわからなかったからだと説明した。後でまとめて報告するつもりだった」

アレイスター「なるほど、不祥事が起こったときの官僚のテンプレを髣髴とさせるね」

244: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/06(土) 00:51:37.83 ID:0KXDCNaB0
土御門「……信じる信じないはあんた次第だ。全責任は俺にあるとも言ったはずだ」

アレイスター「……ふむ」

土御門「処分するってんなら後でいくらでも受けてやる」

アレイスター「……後で、ね」

土御門「俺たちの不手際が招いた事態だ。てめえのケツはてめえで拭かせてもらいたい」

アレイスター「イレギュラーな騒動で計画に差し障りがあると困るんだが」

土御門「それを言うなら、七人のうちの一人が欠けることだって同じだろう」

アレイスター「確かに損失は小さくないが、だからと言って代用が効かないわけじゃないよ」

土御門「……ッ!」

アレイスター「表向き、レベル5とレベル4の差は大きいと思われているけど」

アレイスター「能力にも個性がある。私は理事たちと違い、単純に戦略的価値、商業的価値で測っているわけじゃない」

アレイスター「純粋なAIM拡散力場の強さなら、レベル5に迫るレベル3もいるということだ」

土御門「……ま、それは幻想殺しも似たようなもんだしな」

245: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/06(土) 00:54:49.72 ID:0KXDCNaB0
アレイスター「そうだね。今は便宜上、超能力者を7人にしているが」

アレイスター「解釈次第では他にレベル5になれそうな者もいないではない」

土御門「……何が言いたい?」

アレイスター「そういう有望な能力者が、同士討ちするような事態があってはならないということだ」

土御門「おい、まさか、第五位を始末するとか言わないだろうな」

アレイスター「……最悪の場合は、もちろんそうするつもりだよ」

土御門「ふざけるな! 計画を放置していたお前の責任だってないとは言えないんだぞ!」

土御門「大体、幻想殺しが『はいそうですか』と納得するわけがねえ!」

アレイスター「もうそれは言われた」

土御門「……あん?」

アレイスター「……いいや、こっちの話だ」

246: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/06(土) 00:58:57.06 ID:0KXDCNaB0
アレイスター「君も知っての通り、飛行船で第五位が行方不明であることは周知済みだ」

土御門「……あ、あぁ」

アレイスター「要するに、一部の理事たちがごねてるということだ。第五位の前には情報の秘匿も意味をなさない」

土御門「……自分たちの研究が明るみになるのは困るってか。どいつもこいつも」

アレイスター「この社会で情報は文字通り命だ。そこを否定する気はない、が」

アレイスター「理事の中で彼女の安否を心から案じているのは、親船氏くらいだろうね」

土御門「お寒いことだな。……それで、結論は?」

アレイスター「猶予は三日。それ以上は一秒たりとも待たない」

土御門「……何?」

アレイスター「……どうした? 意外そうな顔をしてるように見受けられるが」

土御門「い、いや、待ってくれるのか?」

アレイスター「……おかしなことを言う。待ってほしいからここに出向いたのではないのかな?」

土御門「あ、あぁ、そうだ。三日、で間違いないな」

アレイスター「よもや足りないなどとは言わないだろうね」チラ

土御門「十分だ、いい知らせを期待しろ」クルッ



アレイスター(……行ったか。我ながら温い判断ではあるが)

アレイスター(あれほどに目が据わった冥途返しはちょっと記憶にないし、少しは心証を良くしておかないとね)ゴポッ

247: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/06(土) 01:01:23.51 ID:0KXDCNaB0
――病室


インデックス「……しょ、とっと」シュルシュル

上条「…………」


御坂『あんたはゆっくり休んでなさい。必ず私たちが食蜂操祈を連れ戻すわ』

土御門『上やんが気にすることじゃない。頼りすぎてた分、きっちり働かねえとな』


上条(……俺、何やってんだろうな)


インデックス「はいとうま、りんご剥けたよ」

上条「……あ、あぁ、さんきゅ」

インデックス「その、とうまみたいに上手くは剥けなかったけど」ツンツン

上条「いやいや、自分の指を切らないだけ大したもんですよ」

インデックス「……うぅ、もう、また馬鹿にして」

上条「そんなつもりはねえよ。んじゃ、ありがたくいただきます」

インデックス「うん、召し上がれ」ニコッ


――シャリッ


上条「……うん、うまい」

インデックス「だよね、日本の林檎って本当に美味しいよね。蜜もこんなたくさん入ってて」シャリシャリ

上条(はぁ、入院してるときしか果物を食べる機会がないってのも、世知辛いなぁ)

248: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/06(土) 01:03:50.72 ID:0KXDCNaB0
インデックス「それで、さっき何考えてたの?」

上条「あん、さっき?」

インデックス「私が林檎剥いてる間、どっか遠くを見てた感じ」

上条「……そ、そうだったか?」

インデックス「…………」ジ

上条「……う」

インデックス「……じっと待っていることの辛さ、少しは身に染みた?」

上条「――――」

インデックス「…………」

上条「……あぁ。痛いほど、染みてるよ」シャリ

インデックス「……そう。なら、むしろいい機会だったのかな」

上条「……いい機会だって?」ジロ

249: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/06(土) 01:07:15.73 ID:0KXDCNaB0
インデックス「悪いけど、そんな顔したって無駄なんだよ。私なんていつもいっつも、やきもきさせられてるんだから」

上条「……い、いや、そいつは」

インデックス「とうまは毎度無茶しすぎだから、取り返しがつかなくなる前に反省する必要があるかもって前々から思ってたんだよ」ブスッ

上条「わ、わかってるよ。だから今だってこうやって――」

インデックス「そんなこと言って、大人しくしてるのはそうせざるを得ないからでしょ? 動けるならとっくに病室を抜け出してるよね」

上条「そりゃまぁ――い、いやっ!」

インデックス「いつも一人で突っ走って、勝手に傷ついて、傷つけられて、それでも最後には何とかしちゃう」

上条「…………」

インデックス「それがとうまだから」

インデックス「初めて助けられなかったことが――今も助けにいけないことが」


インデックス「とてもとても、悔しい」


上条「……ッ」グッ

インデックス「そう顔に書いてあるんだよ。バレバレ」

上条「…………」

上条「……そっか。バレバレか」ポリポリ

インデックス「バレバレに決まってるよ。とうまが私に隠しごとなんて、百年早いんだよ」エヘン

250: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/06(土) 01:11:49.75 ID:0KXDCNaB0
上条「……悔しいだけなら、むしろ良かったんだけどな」ポツリ

インデックス「……え?」

上条「たとえ怪我が軽かったとしても、すぐに動けたかどうか、いまいち自信がねえんだ」

インデックス「それは、どうして?」

上条「……認めるのも癪だけど、怖いんだよ」

インデックス「怖いって、相手がそんなに強かったの?」

上条「それも、あるな。多分、あの時俺は――」

上条「足を負傷していようとしていまいと、食蜂を連れ去られてた」

上条「鍛え方が違った。不良の喧嘩ごっこ程度じゃ、対処のしようがないくらいに」

上条「右手が通用しない相手に対して、自分があそこまで無力だったことを思い知らされて」

上条「たかが銃一つで抵抗できなくなるってわかっちまって」

上条「こんなざまじゃ、居場所が割れていても、足がそっちに向いたかわからねえ」

インデックス「……とうま」

上条「しかも、よりによって、守るべき女の子に命乞いをさせちまった」ギュッ

インデックス「……ん?」

上条「……合わす顔がないんだ。護衛失格の烙印を押されたも同然だってのに」

上条「もしまた俺が原因で、あんなみっともない真似をさせちまったらと思うと――」


――ガブッ!


上条「ってぇ、久しぶりーーーーッッ!!?」

251: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/06(土) 01:13:15.03 ID:0KXDCNaB0
上条「お、お前、怪我人にあんま無茶すんなよ」ヒリヒリ

インデックス「ごめん、とうまが馬鹿すぎて無意識に噛んじゃったよ」

上条「謝るのと貶すのを同時に一文で済ますんじゃねぇ!」

上条(つーか無意識って、かなり嫌だぞそれは)ヒク

インデックス「っていうか、とうま。それはちょっと違う、ううん、むしろひどいんじゃないの?」

上条「……ひどい? 何が?」

インデックス「その食蜂って子は、とうまを助けたい一心でそうしたんだよ?」

インデックス「想いが理性に勝ったなら、膝をついて這いつくばることでも、それは尊いし、むしろ誇るべき行為だと思うけど」

上条「……ッ」

インデックス「なのに当人がその行動をみっともないって言うの? 人命を助けるために頭を下げることを?」

インデックス「私はとうまの命がかかってたらたとえ何百回だって頭下げるよ?」

上条「……イ、インデックス」

インデックス「……それとも何? とうまは、食蜂って子を助けるために頭を下げられないの?」

上条「そんなわけねえ!」

上条(下げれるに、決まってる)ギリ

インデックス「うん、だよね」ニコ

252: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/06(土) 01:16:16.43 ID:0KXDCNaB0
インデックス「何ていうか、男の人特有の思考回路だよね」

インデックス「暴力に耐えた方が格好良くて、跪いた方が格好悪いみたいな」

インデックス「お互いにお互いを守ろうとしての行動に、優劣なんてつけられないのにね」

上条「……ごめん。お前の言う通りだ」

インデックス「もちろん、相手の強い想いに引け目を感じるのはあっていいと思うよ? ――ただ」

インデックス「少なくとも、その子はとうまにそんな顔をさせるために頭を下げたわけじゃない。そう私は思うんだけど」

上条「……そう、だな」

インデックス「うん、きっとそうだよ」

上条「……ありがとな、インデックス」

インデックス「え?」

上条「少し気分が軽くなった。お前のおかげだ」

インデックス「ふふ、どういたしまして。私も、久しぶりにシスターのお勤めを果たせたんだよ」

253: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/06(土) 01:18:48.27 ID:0KXDCNaB0
上条「お勤めねぇ。さながら、俺は迷える子羊ってか?」

インデックス「失敗と向き合うのは大事だけど、それにいつまでも引きずられてたら、何もできなくなっちゃうからね」

上条「…………」

上条「……なぁ、インデックス」

インデックス「うん、今度は何?」

上条「その、こんなことを頼んでいいのかは、わからねえんだけど――」


――コンコン


上条「っと、はいはい、どちらさん?」

舞夏「土御門舞夏であるー。上条にお客さん、みたいなんだがー」

上条「……客? 見舞いじゃなくて?」


???「sorry、案内ありがとう」

254: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/06(土) 01:23:19.44 ID:0KXDCNaB0
――バタン


???「…………」ジト

上条「あー、えぇっと」

上条(……誰だ、この女の子、思い出せねえな)

???「……なるほど、あなたが」

上条「あ、あのぅ、つかぬ事をお伺いしますが……初対面っすよね?」

???「……ええ、そうね。まさか入院しているとは思わなかったけど」

上条「まぁ、その、ちょっと紆余曲折あったりなんかしまして」ハハ

インデックス「なんか落ち着きないね。どうしたの、とうま」

上条「い、いや、別に……」

上条(……長点上機の制服ってことは、高校生か? 先輩っぽいオーラがひしひしと)

舞夏「兄貴の部屋掃除しに行ったらお前の部屋の前にいたんだー。ここにいることを伝えたらお前に会いたいって」

上条「あぁ、わざわざ案内してくれたのか。すまなかったな」

舞夏「ついでだから構わないぞー。困ったときはお互い様とも言うしな」

???「何はともあれ、まずはお礼を述べておくわ。土御門さんに、上条当麻くんも」

上条「……へ? 舞夏はわかるけど、何で俺にお礼? つか、俺のことを知ってるのか?」


???「実験を止めてくれたことへのお礼。妹たち(シスターズ)、と言えばわかるかしら?」

255: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/06(土) 01:26:50.72 ID:0KXDCNaB0
上条「……お前、いったい?」

???「私がどこの誰かなどさして重要ではないのだけど、まあいいわ」

???「布束砥信。かつてあなたが止めた実験に関わらされていた者よ」

上条「実験……って、まさか」

舞夏「あー、おいシスター。しばし外のレストランで甘味と洒落こまないか」

インデックス「甘味! ……あ、でも、とうまが」

上条「俺ならもう大丈夫だ。お前も看病し通しで少し疲れたろ? 遠慮しないで休んでこいって」

インデックス「……ほ、本当? 私がいなくても困らない?」

上条「そりゃもう、全然困らな―――い、いや、困るには困るけど、それにしたって休みは必要だろ」アセアセ

インデックス「……」ガルル

布束「ごめんなさい。私が話したいことには、操祈のプライベートに絡むこともあって、出来れば彼と二人だけで」チラ

上条(操祈って、呼び捨て? ……このお姉さん、食蜂の知り合いか)

インデックス「んー、そっか。そういう事情じゃ仕方ないね――え、何、舞夏」

舞夏「…………」ゴニョゴニョ

インデックス「あぁ、うん、そうだね! スペチョコイチゴパフェで手を打つんだよ!」

上条「こらそこッ、変な知恵つけんなよ!」

舞夏「なんのことかなー?」ニヤニヤ

256: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/06(土) 01:29:27.40 ID:0KXDCNaB0
――バタン


上条「すまん、わざわざ来てくれたのにそっちのけで。遠慮なくかけてくれ」

布束「それじゃあ、お言葉に甘えて」チョコン

上条「そんで、関わらされていた、だっけか。何とも微妙なニュアンスだな」

布束「……被害者か加害者かと言われれば、加害者側ね。幼少の頃から洗脳装置(テスタメント)の開発に携わっていたわ」

上条「お前は、研究者側か?」

布束「……ええ。操祈の言葉を借りるなら、共犯者というカテゴリーに含まれるわ」

布束「……多くの犠牲が出たことに責任は感じている。とはいえ、被害者意識も捨てきれてないけど」

上条「……で、このタイミングで用件っていうのは、食蜂絡みなんだな?」

布束「ええ、そう。あの子が行方不明になったって飛行船のニュースで知って」

布束「それで、どうしてもあなたに会う必要があると思ったの」

上条「……俺に? 何のために?」

布束「一口には言えないけど、そうね、一番の理由は」


布束「あの子に助けられた借りを返すため、かしらね」

257: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/06(土) 01:31:00.17 ID:0KXDCNaB0
上条「……助けられたって、食蜂に?」

布束「ええ、そう。実は私、つい二週間前まで監禁されていたの」

上条「監禁ってッ、今回食蜂を拉致したやつらにか?」

布束「それは……わからないけど、多分別口じゃないかしら」

上条「……へ、違うのか?」

布束「おそらくね。彼らの中では、ううん、彼らの頭の中では、私はまだ捕まっていることになっているはずだし」

上条「……うん? どういうことだ」

布束「彼女の能力については知っているでしょ?」

上条「……あぁ、そういう」

上条「つまり、心理掌握であんたがまだ捕まっている状態だと思い込まされてるんだな?」

布束「厳密には少し違うのだけど、そう思ってもらって不都合はないわ」

259: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/06(土) 01:33:09.38 ID:0KXDCNaB0
上条「……しかし、いくら心理掌握でも、出来ることと出来ないことがあるだろ?」

布束「どういう意味?」

上条「どうしたって、お前は監禁場所にいないんだから、カメラや外部の人の目は誤魔化せないんじゃないか?」

布束「そこが、あの子の上手いところよね」

上条「というと?」

布束「私は、今も研究所にいるの。それも、研究者の目のつくところに」

上条「……いや、すまん。俺あんまり頭が良くないから、言っている意味がよく」

布束「難しく考えなくていいわ。言葉通りの意味なの」

布束「研究に携わってない学生には周知されていないけど」

布束「学園都市において、実験による不幸な事故はしょっちゅう起きてるの」

上条「……そりゃまぁ、最新の科学技術を開発するともなれば、重大事故の一つや二つは起きるだろうな」

布束「ええ。つい最近だと、ある新薬の被験者が心停止を起こしてしまうなんてことも、あったみたいね」

上条「……いやに具体的だな?」

布束「それで、無事な臓器を学術的に利用しようと摘出したらしいんだけど、一つ提供してもらったみたい」

上条「……提供って、一体何を?」

布束「これよ」コンコン

上条「……頭?」

布束「脳ミソ。操祈は私を処分しようと躍起になっていた研究者たちを逆に洗脳し」

布束「手に入れた脳を利用して、私の死を偽装させたのよ」

261: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/06(土) 01:37:08.75 ID:0KXDCNaB0
上条「……死を、偽装」

布束「そう。あなただって牛モツや鳥レバーを食べたことくらいあるでしょ?」

上条「そりゃまぁ、あるけど」

布束「でも、それがいちいち違う個体の内臓だって意識することはないわよね。消耗品だもの」

布束「だからこそ、外では食品偽装なんてことがまかり通っているわけだけど」

上条「……てーと、要するに食蜂は、実験で亡くなった人の脳を、お前の物に仕立て上げたってことか?」

布束「ええ、学園に背信した罪で、私も危うく人体実験の被験者にされるところだったんだけど」

布束「すんでのところで、私の脳みそが摘出されたかのようにあの子が演出してくれたわけ」

上条「じゃあ、その名前もわからない人の脳を、研究者たちは」

布束「私の脳だと誤認しているはずよ。もちろん、いずれは嘘もバレるんでしょうけど」

上条「しかしよくもまぁ、そんな大胆な真似をしたもんだ」

布束「専門家でもない限り、臓器を一瞥して誰のものかを判断するのは難しいから」

布束「研究材料についても管理者ならいざ知らず、DNAを逐一調べるなんてことはしないし」

布束「私がこうして話していられるのも、あの子のおかげってわけ。本当に感謝してもし足りないわ」

上条「……そっか。あいつが」

262: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/06(土) 01:40:04.58 ID:0KXDCNaB0
布束「さて、私の動機をわかってもらえたところで本題に入りたいんだけど」

上条「その前に、ひとつ質問いいか?」

布束「……何かしら?」

上条「お前が今から言うことって、食蜂を助けるのに役立つことなんだよな?」

布束「多分。残念ながら、確証は持てていないのだけど」

上条「なら悪いけど、俺以外のやつに知らせてやってくれないか? 協力したいのはやまやま何だが、ご覧の有様でさ」

布束「それは、難しいわね。あの子はあなたに助けられることを望んでいるはずだし」

上条「……へ?」

布束「……ううん、この言い方は正しくないか。訂正するわ」


布束「操祈曰く、今のあの子は、おそらくあなたにしか助けられないのだそうよ」


上条「……それは、どういう意味だ?」

263: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/06(土) 01:42:13.62 ID:0KXDCNaB0
――地下施設


白衣男「洗脳が出来ない? 話が違うんじゃないか」

???「仕方なかろう。おそらく今の彼女は、自分自身が能力者であることすら覚えていまい」

白衣男「だからぁ、なんでそんなことになってるんだぁ?」

???「おそらくは、自分自身に能力を使ったのだろうな。心当たりはないかね?」

白衣男「…………」

白衣男「……あー、あれか」

???「その顔は、あるようだな。だったら、君の失態だ」

白衣男(文字通り、最後の悪足掻きかぁ。面倒な真似してくれたもんだぁ)

???「それにしても人間、捨て鉢になると何をするかわからんな。このままでは計画が滞る」

白衣男「具体的には、どういう状況なんだぁ?」

???「脳内に難解にして緻密なセキュリティを構築している。予め自らが洗脳される可能性を考えていたのだろう」

白衣男「誰も洗脳できないから自分自身を、ってかぁ? 理解不能だなぁ」

???「まったく、自殺にも等しい愚かな行為だ。思春期の子供の思考回路は度し難いよ」

265: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/06(土) 01:45:41.90 ID:0KXDCNaB0
白衣男「軽口を叩いてるからには、何とかなるんだろうなぁ?」

???「脳細胞が破壊されたわけではない。記憶の上層部に『忘れた』という巨大なシールを貼りつけた状態だ」

白衣男「フォーマットか。その下には元の鉱脈が埋もれているわけだ」

???「うむ、手に入れた例の洗脳装置をフル稼働させ、表層のセキュリティから丁寧に解析していけば」

白衣男「遠からず元に戻ると」

???「厳密には、元とは言えんがね。能力だけなら二日もあれば十分だろう」

白衣男「能力、だけか? 記憶や人格はいったいどうなる?」

???「能力者であることさえ思い出してもらえば十分だ。思い出や人間関係まで組成してやる理由もないからな」

白衣男「……なるほど。だが、そうなったら最早別人ってことになるが」

???「まぁ、記憶に乖離が生じることで人格がねじ曲がる可能性は大いにあるだろうな」


???「……で? 我々に何か不都合があるのかね?」


白衣男「あー、はいはい、失言でしたぁ」

266: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/06(土) 01:49:22.38 ID:0KXDCNaB0
???「当面、彼女が能力を使いこなせるようになればいい。我々の計画に齟齬を生じないようにするのが第一だ」

???「性格がどうなろうとどうせ言いなりにさせるのだしな」

白衣男「……やれやれ、悪党の鑑だよ。あんたは」

???「これは心外な発言だ。私にあるのはピュアな研究者魂だけだよ」

白衣男(……本気でそう信じてそうなのが、怖いよなぁ)

白衣男「んで、脳の解析中、洗脳装置は一切使えないという理解でいいか?」

???「そういうことだな。これだけの騒ぎになると理事会の犬が動くだろう」

白衣男「汚れ(仕事)かぁ。嫌だなぁ、気が進まないなぁ」

???「根っからの人殺しが何を言っている」

白衣男「うわぁ。傷つくわぁ、その物言い」

???「報酬に見合った働きをしてくれればいい。君には期待している」

白衣男「へいへい」ヒラヒラ

267: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/06(土) 01:56:18.63 ID:0KXDCNaB0
――ウィーン


???「やれやれ、あの間延びした喋り方はどうにもいただけんな。仕事振りには文句もないが」

???「……さて」チラ

食蜂「……ぅ」

???「洗脳した第五位の能力で高位の能力者を一様にシンクロさせ、巨大なAIM拡散力場を構築する」

???「精緻な制御を施すための、さしずめ生体解析機といったところかな」

???(この理論なら、樹形図の設計者(ツリーダイヤグラム)の演算能力を上回ることも可能なはず)

???(そして未来予測さえ可能になれば、より効率のいいレベル6への到達方法が明らかになるだろう)

???「くっくっく、やっと計画を潰されたお返しができるなぁ。えぇ? 小娘」


???「洗脳が完了した時が楽しみだよ。君には従順なしもべとして、心身ともに尽くしてもらおう」

???「君が忌み嫌った実験の中心に、他ならぬ君が据わるんだ。復讐としては、申し分のない形じゃないかね?」ククッ

268: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/06(土) 02:04:57.47 ID:0KXDCNaB0
上条「自分を洗脳って――――いくらなんでも」

布束「突拍子もない話だけど、以前に彼女が仄めかしていたのは確かよ」

布束「もしチャンスがあったなら、彼女は自らの脳に錠前(ロック)をかけたと思う」

布束「あの子はあれで人一倍貞操観念が強いし、拉致とか暴力とかには精神的に耐えられそうにないし」

上条「……だからって、おいそれとは信じられねえぞ。心理掌握で現実逃避って」

上条「要するに、自分じゃない別人になっちまうみたいなもんだろ?」

布束「それはもちろん、好き好んでやるわけじゃないでしょうし」

布束「だけど、あの子、自分の能力の危険性は重々認識していたから」

上条「その、そうすることで、洗脳は防げるのか?

布束「広域で能力を発揮するあの子が演算能力をフルに使って一人に強力な洗脳を施したのだとしたら」

布束「いかに最新型のテスタメントといえど、簡単にどうこうはできないと思う」

上条「良かった、その点は、まだ望みはあるんだな」

布束「……それでも、時間をかければいつかは破られるわ」

布束「もっとも、破られようと破られまいと、元の操祈に戻せる保証はないのだけど」

上条「……、」

269: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/06(土) 02:15:41.31 ID:0KXDCNaB0
布束「いくら自分の能力を利用されないためとはいえ、やっぱり自殺行為よね」

布束「首尾よく助け出せたとして、彼女の洗脳をうまいこと引き剥がす手段はない。――そう、そのはずなのに」チラ


上条(…………あ)


布束「……そんな危なっかしい話をしているときに、あの子、はにかみながらこう仄めかしたの」

布束「もしかしたら、たった一人だけ、呪いを解けるかも知れない人がいるって」


上条(……そう、か)


布束「実際にこうなってしまった以上、私にはあやふやな可能性に縋るしかなくって」


上条(……本当に、そうなのか)


上条(お前は、俺があんなに無様な敗北を喫したってのに)


上条(俺のことを、俺がもう一度助けに来るって、信じて……?)


上条「――は」ポロ

上条「はは、あははは」ポロポロ

布束「……え、ちょ、ちょっと、何、いきなり?」ビク

270: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/06(土) 02:18:55.59 ID:0KXDCNaB0
上条「……なん、だよ、あんにゃろ」ゴシゴシ

上条「どこまでお人好しなんだよ。人のこと、全然言えねえじゃねえか」グッ

布束「……ど、どうしたの? え、嘘、ホントに泣いてるの? って、笑ってる?」アワアワ

上条「あーー、ったく、情けねえ。いつまでへこんでんだよ、俺は」

布束「あ、あの、何か私、不躾なこと言ったかしら?」オドオド

上条(勝手に助からないって決めつけて、自己嫌悪して)

上条(そういう女々しい態度が許せねえのが、上条当麻だろうが)

上条(こうしている間にも、みんな必死に駆けずり回ってるってのに――)スゥゥ


上条「――ッッ、あ゛あ゛あ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッッッ!!!」ビリビリビリッ


布束「~~~~~ッッ!!」キーン


上条(絶望してる暇なんざねぇだろ、上条当麻ッ! てめえの幻想殺しは、てめえの心はッ)

上条(まだ全然終わっちゃいねえッッ!! 始まってすらいねえッッ!!)ミシッ

布束「ちょ、ちょっと、あなた、ここ病院なんだけど――」

上条「――恩に着るわ、布束、っつったっけ」

布束「……え……な」

上条「やっと目ぇ覚めたわ。ホント、諦めが悪いことだけが、俺の唯一無二の取り柄だってのにな」

271: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/06(土) 02:28:24.08 ID:0KXDCNaB0
布束「な、何を勝手に納得してるの? っていうか、少しは長若の序を弁えた発言を――」

上条「あと少しで、取り返しのつかない後悔を抱えるとこだった。ありがとな」

布束「え、あの、……どういたしまして?」キョトン

上条(そうだ、あいつの本心がどこにあるかなんて、どうだっていい。悩む必要なんてなかったんだ)

上条「唯一あいつを元に戻せる俺が諦めちまって、他に誰が手を差し伸べんだって単純な話じゃねえか」

布束「……本当に、戻す当てがあるの? あの子の洗脳を解く方法に、心当たりがあるのね?」

上条「洗脳装置での処理が終わる前なら、どうにかする。してみせる。意地でもだ」

布束「……そんなに強く言われたら、信じてしまうわよ?」

上条「約束する。俺の全てを投げうったって、あいつのことだけは投げ出したりしねえ」

布束「……、」グッ


上条(――そうだ、必ず)



食蜂『今の上条さんの食べっぷり見てたら、疲れなんて吹き飛んじゃうかなーって』フニャ



上条「食蜂操祈は、必ずこの手で取り戻すッッ!!」グッ

304: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/14(日) 12:03:07.66 ID:VKYR8VCJ0
――キィ


インデックス「とうま、病院であんまり大声は――ナースステーションの方まで聞こえたんだよ」

上条「あ、あれ、インデックス。早かったな」

インデックス「うん、……それより、なんかすっきりした顔してるね?」

上条「ああ、柄にもなくへこんじまってて、悪かったな」

インデックス「ううん、いいんだよ。むしろ、たまには弱いところも見せてほしいな」

上条「はは、できれば今回限りと願いたいもんだ」

インデックス「そうだ、あのね。土御門さんの病室にいったら意外な人がいたんだけど」

上条「意外な人?」

???「しかし、もったいないことをしましたね」スッ

上条「……って」

神裂「もう少し早く来ていれば、しおらしい上条当麻を見られたのでしょうに」

上条「か、神裂ッ!?」

305: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/14(日) 12:04:31.05 ID:VKYR8VCJ0
上条「……何で、お前がここに」

神裂「まぁ、当然の疑問ですね」

布束「…………」

布束(日本刀って、銃刀法違反、よね)シゲシゲ

神裂「……何か?」チラ

上条「あ、あぁ、ごめん。こいつ俺の知り合いなんだ」

布束「……そ、そう。なかなか個性的なご友人をお持ちなのね」

上条「突っ込みどころ満載だと思うけど、スルーしてやってくれ」

布束「……まぁ、構わないけど」

神裂「当人を前にして、あまり愉快なやり取りではありませんね」ムッ

布束(……見舞いの女比率、高くない? 操祈、彼の交友関係把握してるのかしら)

306: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/14(日) 12:07:21.42 ID:VKYR8VCJ0
上条「それより、どうしてお前がここに?」

神裂「私だけでなく、ステイルも一緒です。院内は禁煙ですので外でふかしていますが」

上条「あいつも来てんのか……」

神裂「昨日の夕方に到着しました。土御門から助力を頼まれましてね」

上条「……土御門が」

神裂「今回の件について大枠は把握しています。力になれるかと」

上条「……いや、ありがたい話なんだが、今回は俺の不始末みたいなもんだからな」

神裂「土御門は彼なりに、一連の騒動にあなたを巻き込んだことを相当悔やんでいるように見受けられました」

上条(まぁ、あいつはそういうやつだよな)フッ

神裂「そうでなくとも、科学側に魔術師が加わっているのなら『必要悪の教会(われわれ)』が動く理由としては充分です」カチャ

上条「そっか。正直助かる」

307: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/14(日) 12:10:40.20 ID:VKYR8VCJ0
布束「……あの、魔術師とか教会とかって」

上条「え? あ、あぁ」

布束「もしかして上条くんって、所謂そっち系に嵌ってる人?」

上条「いや、その、何といえばいいのか」

神裂「そっち系とはいったい何のことです?」

布束「……え? えっと、だから、オカルトとか」

上条「神裂、ちょーっと話ややこしくなるから黙っててくれ」

神裂「……はぁ」

インデックス「あぁ、そうそう。布束さん、だったよね」チラ

布束「……え、ええ」

上条「ありがと、とうまをいつものとうまにしてくれて」ペコ

布束「……礼には及ばないわ。それについては、お互い様だから」

308: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/14(日) 12:22:52.81 ID:VKYR8VCJ0
布束「……えっと、それじゃあ、そろそろ失礼するわね」

上条「え、あれ、もういいのか?」

布束「伝えるべきことは伝えたから。あの子がもしも『そういう状態』だったら、お願い」

上条「……わかった、出来る限りのことはする」

布束「期待してるわ。怪我、お大事にね」チラ

上条「あぁ、あのさ」

布束「……何かしら?」

上条「いや、布束さんも安全とは言えなそうな立場だから。くれぐれも気をつけてくれよ」

布束「……ええ、ありがとう」

インデックス「ばいばい」

神裂「……」ペコ

309: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/14(日) 12:43:07.99 ID:VKYR8VCJ0
――バタン


神裂「今の少女は?」

上条「拉致られた子の先輩」

神裂「……拉致られた、ですか」

上条「あぁ、俺の目の前でな」

神裂「あなたの右手をもってしても、守れなかったのですね」

上条「……恥ずかしながらな」

神裂「何事にも例外や、どうしようもできぬ相性というものは存在します。天草十字の教義はご存知ですね?」

上条「あぁ。救われぬ者に救いの手を、だったか」

神裂「いくらなんでもその体で戦場に赴くのは無茶というもの、後は我々が請け負います」

神裂「必ず件の少女をここに連れてきます。ですからゆっくりと静養して――」

上条「ま、そうするのが無難だってことはわかってるんだけどさ」

上条「――俺にも、突き通さなきゃなんねえ意地ってもんがあるんだよな」チラ

インデックス「……ん?」キョトン

上条「……インデックス」

インデックス「何、とうま? 私に頼み事?」

310: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/14(日) 12:43:58.78 ID:VKYR8VCJ0
上条「……へへ、ここんとこ、どうも見透かされてんな」

インデックス「そう思うんなら、それだけとうまに余裕がないってことだよ、きっと」

上条「……かもな。だったら、単刀直入に聞くけどよ」


上条「今の俺でも戦えるようになる魔道書って、ないのか?」


神裂「……ッ」

インデックス「…………」ムー

インデックス「あのねとうま。前にも確か言ったと思うけど、能力者が魔法を使うのは」

上条「自殺行為だってんだろ? ちゃんと覚えてるさ。でもよ」

上条「10万3000冊もの魔道書があるのなら、中には一つや二つ例外があるんじゃないか?」

インデックス「……そ、それは」

上条「……その顔は、あるんだよな?」

インデックス「……うぅー」

311: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/14(日) 12:58:22.16 ID:VKYR8VCJ0
神裂「…………」

神裂(にわかには信じがたいですね。彼が彼女にその手の助勢を頼むとは)

上条「能力にだって俺の幻想殺しみたいな例外があるんだ」

上条「なら、魔術にあったって不思議じゃねえよな?」

インデックス「……確かに、ないこともないけど、……でも」

上条「あるんだったら頼む、この通りだ。――教えてくれ!」バッ

インデックス「ちょ、ちょっと! 頭を下げるなんて卑怯なんだよ」ブゥ

上条「無理なお願いをしてんのはわかってる。でも、それでも、今の俺にはどうしても必要なんだ」

インデックス「……と、とうま」

神裂(人を助けるためなら手段を選ばぬその姿勢)

神裂(……妙に、インデックスの一件を思い出させますね)フッ

312: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/14(日) 13:00:05.06 ID:VKYR8VCJ0
上条「ガルドラボーク、の書?」

インデックス「……とうまの右手のことを考慮して、ぎりぎり許容できそうなのはこれくらい」

神裂「グリモワの派生ですね。またずいぶんとマイナーな魔道書を……」

上条「マイナーだろうがメジャーだろうが関係ねえ。とにかくそれを使えば、足の怪我を治せるんだな?」

インデックス「……全身が活性化されるらしいから、再生速度は早まるはずだよ。まだ試してみたことはないけど」

上条(まぁ、10万3000冊なんて量、全部試しようもないよな。一日一冊試したって一生でも足りねぇし)

神裂「ガルドラボーク。アイルランドの神話で語られる、不幸を排する魔道書です」

上条「……へぇ、そりゃあ何とも、俺にぴったりだな」ニヤ

神裂「伝承にある通りならば、その展開速度はこの子が使用した聖ジョージの剣、竜王の吐息(ドラゴンブレス)にも劣らないでしょう」

上条「展開速度……?」

インデックス「侵食速度とも言い替えれるかも。とうまの右手が全身に及ぶ治癒能力を打ち消しちゃうのを何とかするわけで――」

神裂「押し波と引き波がぶつかり合うのをイメージしてください。右手の打消しが勝れば魔術を発動することはできません」

インデックス「……むしろ打ち消しが間に合わないパターンを気にしてるんだけどね」

313: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/14(日) 13:09:53.00 ID:VKYR8VCJ0
上条「……一つ引っかかったんだけどさ」

インデックス「何?」

上条「魔術を使うとヤバイ云々って能力者だけのはずだろ?」

インデックス「全般的には、そうだね」

上条「なら、なんで治療に役立ちそうな魔道書が禁書指定されてんだ?」

インデックス「一つは宗教上の対立とかややこしい問題で、もう一つは、今説明したように展開速度が速すぎること」

上条「……速すぎるって、効き目が早いのはいいことだろ」

神裂「科学で喩えるなら強制的に新陳代謝を急加速させるようなものです。制御しそこねたら脳の活性化が過ぎて狂戦士になりかねません」

上条「狂戦……って、マジかよッ!?」

インデックス「アイルランドとかケルトの神話ってそういうお話も多いんだよ。表裏一体っていうか」

上条「……そこまで強力ってことは、もしかして戦いにも応用できたりするのか?」

インデックス「ちょっととうま? まだ使うとは言ってないんだよ」ブスッ

314: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/14(日) 13:10:54.32 ID:VKYR8VCJ0
インデックス「私は、とうまの体で博打みたいなことしたくはないんだよ」シュン

上条「……インデックス」

インデックス「それに、ガルドラボークはルーンを使うから」

インデックス「私は、知識はあってもルーンの扱い自体はあまりやったことないし、もし失敗したらと思うと」


???「不安なら、それは僕が行おう」ヌゥ


上条「……っ、ステイルッ!」

神裂「やっと来ましたか」

ステイル「君はよほどこの病室が好きなんだね。いっそ住民票もここに移したらどうだい?」

上条「……おま、顔出して真っ先にいう台詞がそれですか?」

ステイル「何だい? 労いの言葉でもかけて欲しかったかい?」

315: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/14(日) 13:12:50.53 ID:VKYR8VCJ0
ステイル「土御門からおよそのことは聞いたよ。大口叩いたのに女一人助けられなかったってね?」

上条「……ッ」

ステイル「あぁ、勘違いしないように言っておくけど、やつはちゃんとニュアンスをぼかしていたよ。言葉の裏を読み取ったまでだ」

ステイル「死人に鞭打つのはどうかと思っていたが、その様子なら平気かな? 君、少し驕っていたんじゃないか?」

上条「なんだとッ!」

インデックス「ちょっと、いきなりその物言いはひどいんじゃないの?」

ステイル「いいや、言わせてもらうね。上条当麻、確かに君はいくつもの修羅場を乗り越え、強敵を退けてきた」

ステイル「だが勘違いするな。君は強者でないからこそ危機に敏い。その点をないがしろにしたから、今回このような目に遭っている」

上条「てめえ、言わせておけば!」バッ

神裂「二人とも、やめなさい。――ステイル、あなたとて文句を垂れるために機内でじっとしていたわけでもないでしょう」

ステイル「さっきの話を聞いてしまっては、一言言わずにはおれないね。安易に魔道書に頼ろうとする姿勢は褒められたものじゃない」

316: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/14(日) 13:15:12.42 ID:VKYR8VCJ0
上条「……虫のいい話だってのは自覚してるさ。だけど、俺は」

ステイル「協力しないとは言っていない。だが、尻拭いのために禁書を頼るのはこれっきりにしてもらえるかな」

インデックス「ステイル。……その、大丈夫なの?」

ステイル「ルーンの扱いなら慣れている。心配無用だ」

インデックス「ホ、ホントにホント?」

ステイル「約束は守ろう。もちろん、そこの彼には僕の言いつけに、主人に仕える忠犬の如く従ってもらう必要があるけどね」

上条「……もっと他に言い方はねえのかよ」ムス

神裂「いささか捻くれた物言いですが、誇張はありませんよ。一字一句間違えず、指示に従っていただく必要があります」

上条「それほどに危険な代物ってか。……わかった、頼めるか?」

ステイル「さぁ、あとは彼女の意志次第だからね」チラ

上条「……インデックス」

インデックス「……気は、すすまないけど」

上条「……、」ジ

インデックス「もう、とうまがこうと決めたら、てこでも動かないもんね」プン

317: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/14(日) 13:17:33.79 ID:VKYR8VCJ0
――病院地下


上条(ここんとこ怪我が多かったせいか、松葉杖が体の一部のように馴染んでるな)トコトコ

上条(……要するに、不幸続きってことなんだが)トホホ

上条「……にしても、なんで霊安室なんだ?」

インデックス「術式を扱う条件に適しているからだよ。こういう厳かな場所には魔力が満ちやすいの」

神裂「人払いのルーンを使っていますから、短時間であれば問題ないでしょう」

上条「何か複雑だな、前回はそいつに痛い目に遭わされたってのに」

ステイル「ぼさっとしてないでその台の前に立て。時間が惜しい」

上条「わ、わかった」ヨタヨタ

ステイル「……インデックス。魔道書の模写を覗かせてくれるか」

インデックス「……うん、それじゃあ、目を瞑ってくれるかな」

ステイル「了解した」スゥ

318: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/14(日) 13:21:45.46 ID:VKYR8VCJ0
ステイル「……よし、概要は把握した」

インデックス「じゃあ、私たちは上で待ってるけど」

インデックス「その、気をつけてね。もし失敗したらステイルにも呪術の反動が」

ステイル「心得ているよ。専門家(プロフェッショナル)は失敗も織り込み済みさ」

インデックス「うん、とうまのこと、お願いね」



ステイル「――さて」

ステイル「発動のルーンは君の右手からもっとも遠い位置に刻む必要がある」

上条「つまり、左足の先だな」

ステイル「それらしく小刀で切り刻んでやっても良かったんだが、傷が治ってルーンが消えたら元も子もないからね」キュポン

上条「って、マジックペンでいいのかよ!」 

ステイル「雰囲気作りで傷つけられるのは御免だろう?」

上条「……そりゃまぁ、そうだが」

上条(そういや、こいつの炎もコピー用紙使ってたっけな。魔術の形態も時代とともに変わっていくのか)

ステイル「もたもたしてないで、早く靴下を脱げ」

上条「わ、わかってるよ」カタン

319: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/14(日) 13:22:47.53 ID:VKYR8VCJ0
ステイル「以前、君の右手は自動書記(ヨハネのペン)が発動させた魔術を完全には掻き消しきれなかった」カキカキ

上条「あぁ。展開速度が重要だってインデックスも言ってたな」

ステイル「そうだ。魔道書の恩恵を持続させるには、君の幻想殺しが勝ちすぎてもいけないし、かといって負けすぎても駄目だ」

上条「俺の右手が力を打ち消す速度と魔道書の侵食具合を、うまいこと拮抗させる必要があるってことだな」

ステイル「その通り。その制御は君自身の意志力と、僕の魔女狩りの王(イノケンティウス)で行う」

上条「……お前が?」

ステイル「魔力のない素人が素面で軽々しく使えるような代物じゃあない。魔術に長じた者がある程度負荷を肩代わりする必要がある」

上条(遠回しな自慢はともかくとして)

上条「な、何からしくないな。そこまで親切にしてくれるなんて」

ステイル「まかり間違っても君のためじゃない。あの子のためだよ」スク

320: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/14(日) 13:23:58.38 ID:VKYR8VCJ0
上条「インデックスのため?」

ステイル「魔術が暴走し、脳にまで達したら、能力開発を受けている君は廃人確定だ」

上条「それは、あいつからも耳タコだって。注意するさ」

ステイル「……いいや、事の重大さをわかっていない」

上条「んなことねえよ。失敗したからって責めたりするつもりは――って、うわっ!?」グイッ

ステイル「そんな言葉がポンと出てくるのが問題なんだがな?」

上条「な、何いきなり怒ってるんだよ! つーか胸倉掴むなって――」ググ

ステイル「君の自殺や他殺にインデックスを付きあわせたら絶対に許さない、そう言っている」

上条「――――ッ」

321: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/14(日) 13:25:02.03 ID:VKYR8VCJ0
ステイル「あの子が渋っていた理由を考えろ。協力したいという気持ちがあって、それでも協力すると言い出せなかったわけを」バッ

ステイル「君が壊れるのを、もしくは人殺しになるのを、何より恐れていたからだ」

ステイル「そういう力を使うのだという自覚が、今の君に足りているか? 僕にはそうは思えないな」

上条「…………」

ステイル「今回、土御門からは概要しか説明されていない」

ステイル「だから君が何を思い、何のために戦うのかはわからない。僕にとって、そんなのは正直どうでもいいことだ」

ステイル「が――いいか。くれぐれもあの子の優しさを踏み躙るな」

ステイル「ただでさえいっぱいいっぱいのあの子に、これ以上重たい荷物を背負わせてみろ」

ステイル「その時は迷うことなく、僕の手で消し炭にしてやる。覚えておけ」

上条「……す、すまん。考え足らずだった」

322: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/14(日) 13:26:32.81 ID:VKYR8VCJ0
ステイル「……では、始めるぞ」スッ

上条「ああ、頼む」


ステイル「――偉大なる王よ、彼の人の心と体を苛む万難に」


ステイル「――新しき血と肉に成り代わるものを与えよ」


上条「……なんつうか、厨二っぽいよな」


ステイル「殺すぞ。――強大なる御身、杯は西、杖は東に」

ステイル「――バアル・ゼブル、嵐と慈悲の気高き王よ、印を頂く者に刹那の豊穣をもたらせ!」


――パァァァァ


上条「って、なんだ!? 足元から光が!」

ステイル「おいっ、突っ立ってないで右手で抑え込め! その光を頭に届かせたら一巻の終わりだぞッ!」

上条「お、抑えろって言われたってッ!」キィン

上条(……ッ、幻想殺しが発動している、けど)


――ヂヂヂヂヂッ!


上条「ちょっ、なんだよこれ! 全然鎮まらねえじゃねえか!」

323: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/14(日) 13:28:12.45 ID:VKYR8VCJ0
ステイル「……予想以上に速いな! 腐っても禁書は禁書か」

上条(って、やばいっ、境界線がせり上がってきた! もう、鎖骨まで……)ググ

ステイル「――魔女狩りの王ッ!」チッ


――ゴォォッッ!


上条「……っと」パァァ

上条(焔が出た途端、体が軽く……?)

ステイル「君にかかる負荷の一部を呪術で肩代わりし、召喚した炎に食わせている」ビリビリ

上条(……境界線が、少しずつ下がっていく)

ステイル「およそ左肩から右腰。その下が術効の範囲のようだな。――足の様子は?」

上条「足っていうか、全身が熱い。何ていうか、低温の火を纏ってるみたいだ」

ステイル「いいだろう。安定している今のうちに感覚を体に刻み込め。あと5分は術効が続くはずだ」

ステイル「制御を失ったら術式全てが消失するか、君の脳を喰らい尽くす。冗談じゃなく、死ぬ気でやれ」

上条「……あ、あぁ」

上条(我ながらとんでもない綱渡りだな。……だけど)

上条(痛んでいた足が、嘘みたいに軽い。これなら――――戦える!)

324: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/14(日) 13:30:44.92 ID:VKYR8VCJ0
――病室


インデックス「……さすがに、完治まではいかなかったみたいだね」

上条「痛みはほとんど感じねえ。これなら多少無茶やっても支障は――」パンパン

インデックス「わたしは、無茶させるために協力したわけじゃないんだよ」

上条「こ、言葉の綾だって。率先してそうするつもりは全くねえよ」

インデックス「ふん、どうだか」

神裂「まぁ、何事もなく終わったのは朗報と言ってよいのでしょうが」

神裂「そちらは、相当きつかったようですね」チラ

ステイル「はぁ……はぁ……まぁ、僕は元来頭脳労働者だからね」グッタリ

上条「無理させちまったな、ステイル。後のことは――」

ステイル「少し休めば、問題ない。銃を相手に無手の君がどこまで立ち回れるか、疑わしいからね」

325: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/14(日) 13:34:08.08 ID:VKYR8VCJ0
上条「……だけど、どうしたって術の使用中は無防備になるだろ?」

ステイル「ルーンが刻んであれば遠隔での支援も可能だ。十分がせいぜいだろうが」

上条「……なら、断る理由はねえな。使うタイミングは、どうやって知らせればいい?」

ステイル「このカードを持って行け」ヒュッ

上条「――っと、とと」パシッ


――キィンッ!


ステイル「おいっ、何で右手で受け取るんだ! せっかく込めた魔力がかき消されただろうが!」

上条「ちょ、そういうことは投げる前に言ってくれよ!」

ステイル「それくらい思い至るのが当たり前だ! このぼんくらが!」

上条「なんだとッ!」

インデックス「……だ、大丈夫なのかな、このコンビ」

神裂「……普段が普段なだけに、不安は尽きませんね」

326: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/14(日) 13:42:30.84 ID:VKYR8VCJ0
上条「やっぱり学生服が一番落ち着くなぁ」ポンポン

神裂「こちらはいつでも出られますよ」

上条「了解。んじゃちょっくら、あのクソどもを捻り潰しに行きますかァ」ポキポキ


ステイル(――――うん?)


上条「ステイル、バックアップは任せたぜ」

ステイル「……あ、ああ」

ステイル(思い過ごし、か? 戦いを前に感情が昂ぶっていても不思議じゃないが)

上条「それじゃあ、行ってくる」

インデックス「う、うん、無理しないでね」

上条「大丈夫だって、怪我する前よりも体調がいいくらいだ。じゃあ――」

ステイル「待て」

上条「――っと、な、何だよ?」

ステイル「…………」

ステイル「術の発動にあたっての注意点は覚えてるな。感情を乱さず、落ち着いて制御しろ」

ステイル「こちらで術のリンクを切ることもできなくはないが、遠隔術式である以上そちらの状況は掴めない」

ステイル「そして戦闘中にそれをやるリスクも大きい。だから、基本的には君に一任する」

上条「ちゃんと覚えてるって。もう耳タコだよ」

神裂(……ステイル?)

327: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/14(日) 13:54:25.47 ID:VKYR8VCJ0
――風紀委員第一七七支部


初春「……衛星写真の最終履歴を突き止めました! 第23学区、情報受信センター付近です!」

黒子「でかしましたわ、初春!」

初春「警備員(アンチスキル)にも情報を回していいんですよね?」

御坂「もちろん、支援は多い方が……っと」チラ

御坂(……確か、以前わたしが忍び込んだ場所よね。樹形図の設計者(ツリーダイヤグラム)の管理施設……)ブツブツ

御坂(潰れた施設があれば蘇る施設もあるってことか。いつの間にのうのうと舞い戻って――油断も隙もあったもんじゃない)ガリ

黒子「あ、あの、お姉様?」

御坂「……ちゃんと聞いてるって」

御坂(今回ばかりは、一切の容赦もなしよ。全力でぶっ潰してやる)バチン

黒子「あ、あの、相手が悪党とはいえ、風紀委員的に人死には認めがたいのですが」ビクビク

御坂「……アイツは、一歩間違えば死んでたわよ」ジッ

黒子「……っ、上条さんのことですか」

御坂「しかもこの一件、既に犠牲者は出ているみたいじゃない。常習的に誰かを傷つけ、貶めようとするような連中が相手なのよ」

御坂「なら自分らがそうされる覚悟の一つや二つできててしかるべきでしょ」

328: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/14(日) 13:58:12.36 ID:VKYR8VCJ0
黒子「だ、だからといって、戦意喪失の相手に追い打ちをかけるような真似は――」

御坂「黒子。あんたは、私が目の前で殺されたとしても、敵を逮捕するだけで済ましちゃう?」

黒子「――ッ」

御坂「……ごめん。ちょっと嫌なたとえだったわね」

黒子「……全くですの」ムス

御坂「だけど、この一件に限って言えば、自分や誰かを守るためなら、相手をどんだけやったとして私は私を肯定するわ」

黒子「……いや、ですから、万が一そのようなことになったらお姉様の評判にどのような傷が」

御坂「そんなの眼中にないわよ。ていうか、また目の前で誰かを助けられない方がよっぽど堪えるっつーの」

黒子「……また?」

御坂「あ、いや、ともかくっ」

御坂「穏便に済ませたいなら、警備員や風紀委員(あんたたち)が迅速に制圧してくれればいいだけの話じゃない?」

黒子「それはまぁ、仰る通りなのですけれども」

329: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/14(日) 14:00:10.30 ID:VKYR8VCJ0
御坂「温いこと言ってないで、あんたも注意しなさいよ。相手は徹底的にこっちの弱味をついてくるんだから」

黒子「もちろん、油断はいたしませんわ。……それにしても意外でしたの」

御坂「意外って、何がよ」

黒子「お姉様が、それほどまでに食蜂さんのことを案じていらっしゃるとは」

御坂「ち、違うわよ! 勝手に愉快な勘違いしないで!」

黒子「あら、違いまして?」

御坂「わたしはっ、アイツの性格や考え方がいけ好かないし、多分これからも好意的にはなれない。――ただ」

御坂「どこの馬の骨とも知らないやつに好き勝手されるのを由とするほどには、嫌ってもいない。それだけよ」

黒子「はいはい、わかりました。そういうことにしておきますの」

御坂「な、何よぉ、その言い方は」

黒子(……ま、無用な心配でしたわね。お姉様ではどう足掻いたところで、悪者にはなりえませんもの)フゥ


黒子(――――お姉様、では?)


黒子(はて、なんでわたくし、そのようなことを思ったのでしょう?)

330: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/14(日) 14:17:37.51 ID:VKYR8VCJ0
――病室(土御門)


――バタン


神裂「お待たせし――」


???『うわぁぁっっっ!!』


神裂「」バッ


土御門「って、な、なんだ、ねーちんか……脅かすなや」

神裂「……こちらの方が驚きましたよ。いきなり悲鳴を上げられるとは」スチャ

エツァリ「も、申し訳ない。ついさっき、有り得ぬものを見てしまいまして」

上条「何かあったのか?」ヒョコ

土御門「……えっ、カミやん!? 足の傷は……」

上条「見ての通りだよ。インデックスたちに協力してもらったんだ」

土御門「そ、そうか」

神裂「……それより、有り得ぬものとは?」

土御門「そ、そうだ。……なぁ、ねーちんとカミやんは」


土御門「幽霊って信じるか?」ビクビク


上条&神裂「……は?」

346: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/15(月) 22:27:42.59 ID:1nuvRONA0
上条「――んで、中庭にいたときにその少女を見かけた、と」

土御門「病院って場所は墓地と同じく死に近いからな。同種の想いが引き寄せられないとも限らん」

上条「……」チラ

神裂「……」チラ

上条「……はぁ、科学と未来の学園都市で幽霊とか、何を寝惚けたこと言ってんですか」

土御門「なにっ!?」

神裂「イギリス正教が誇る陰陽博士がここまで落ちぶれていたとは、最大教主が知ったらさぞ嘆かれるでしょうね」

土御門「二人とも、疑いたいのはわかるけど事実なんだって! なんなら一緒に目撃場所まで」

エツァリ「あの、やめませんか? 彼女だって、きっとそっとしておいてほしいでしょうし」

土御門「いや、でも、嘘つき呼ばわりは納得いかんぜよ!」

エツァリ「ですが、下手に騒ぎ立てて祟られでもしたらどうするんですか」

土御門「……む」

上条「――あー、お前ら、優先順位を考えてくれると助かるんだが」ポリ

347: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/15(月) 22:32:53.28 ID:1nuvRONA0
土御門「ふん……自らを洗脳した可能性、か」

上条「断言はできないけど、この二日間まったく相手に動きがねえなら考えられなくもないだろ?」

土御門「しっかし上やん、その情報の真偽がどうあれ、俺らのやることは変わらんぜよ?」

上条「……まぁ、そうなんだよな」

土御門「第五位の先輩とやらの話が本当だとして、洗脳装置の解析が予想以上の早さで完了しないとも限らない」

エツァリ「もちろんその逆も然りですけどね。門外漢の我々がその辺りを正確に推し量ろうとするのは危険ですし」

上条「洗脳への対処法は必須か」

土御門「それで、悪いんだが上やん。俺らは食蜂を殺害する方向で動くことに決めた」

上条「…………」


上条「……何だそりゃ、冗談にしちゃ笑えねえぞ?」ギロ

348: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/15(月) 22:43:08.42 ID:1nuvRONA0
土御門「そんな怖い目で睨むなって。つまり、そういう前提で動くってことだ」

土御門「アレイスターのやつが、有力者の接触があったことを仄めかしてたんでな。苦肉の策さ」

上条「食蜂を邪魔だと思ってる連中が他にいるってのか?」

エツァリ「邪魔というか、第五位はああいう能力をお持ちですから、腹黒い方々がピリピリしているんです」

エツァリ「決して表に出してはならない情報も、彼女の力があれば容易に奪取できますからね」

土御門「とはいえ、連中だって馬鹿じゃない。表立って批判を浴びるような真似は簡単にはやらないだろうさ」

神裂「……で、あなた方がその依頼を受けると?」

エツァリ「現状、依頼の形では来ていないそうです。が、先走る馬鹿が出ないとも限りません」

土御門「だから、何者かがそういう動きを見せるより先に、俺たちが殺害しようと動いているように見せかける必要があるんだ」

上条「……見せかけ?」

349: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/15(月) 22:56:52.34 ID:1nuvRONA0
エツァリ「第五位の能力開発にはスポンサーが多数ついてますからね。狙うのは多分にリスクがあります」

エツァリ「そこで、別の誰かが既に標的を狙っていると知れば、動くより見(けん)に徹するはずです。同時に、敵へのけん制にもなるでしょう」

上条「……なるほど、人質として利用されないようにする布石になるか」

神裂「……ポーズで別の組織が安易な行動に出るのを躊躇わせる。要するに、そういうことですね」

エツァリ「ええ、ご明察です」ニコ

土御門「今もって第五位抹殺の可能性はゼロじゃない。表に出たらやばい話を腹に抱えてるのは、何も連中だけじゃないからな」

土御門「だから、俺たちはそちらも警戒して当たる。だから身柄の確保は警備員か上やんたちにやってもらいたい」

神裂「そういう事情でしたら、異存はありません」

土御門「いささか人手不足の感は否めないが、戦いに注力すれば十分助けになるだろう。それに、俺らが食蜂を狙っていると知れれば」

上条「お前らから食蜂をできるだけ遠ざけようとする。その分、動きは読みやすくなるか」


上条(とはいえ、動物園でのこともある。相手が食蜂を守ってくれるとも限らない……)


上条「……話はわかった。じゃあ、俺たちは警備員と連動して動いた方がいいな」

土御門「ああ、上やんが戦列復帰してくれたのは嬉しい誤算だ。今度は必ず勝つぜよ」

350: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/15(月) 23:10:47.01 ID:1nuvRONA0
――情報受信センター 制御室


白衣男「お疲れさぁん」

研究員A「お疲れ様です」

白衣男「……」チラ


食蜂「……はぁ……はぁ」


白衣男「まだ持ちそうだな。脳の解析はどこまで進んでいる?」

研究員B「五分前の段階で、68%まで終了しています。このペースならあと半日もあれば完了するでしょう」

白衣男「その前に邪魔が入る可能性がある。六時間で仕上げられるか」

研究員A「しかし、これ以上負荷をかけると終了までもたないかも知れませんよ?」

白衣男「木原さんのご命令だ」

研究員B「わ、わかりました」カチ


食蜂「……う……ぐっ」ビクン

351: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/15(月) 23:21:29.98 ID:1nuvRONA0
食蜂「……あっ……うぅうぅ」ガクガク


白衣男「んー、苦しそうだなぁ」

研究員A「実際苦しいと思いますよ。眠る間もなく異質なデータを脳内に詰め込まれてるんですから」

白衣男「お嬢ちゃんも悲惨だなぁ。クソみてえな能力持って生まれて来なけりゃ、こめかみに電極とか突っ込まれずに済んだのに」

食蜂「……い、言っている意味が、まったくわからないわ」

白衣男「あら、聞こえてたのか。ちょっと中断してくれる?」

研究員B「は、はい」カチ

食蜂「――っ、くっ、はぁ……はぁ……」

白衣男「はぁーん、短時間でこうも疲労が色濃くなるのか」

食蜂「……あ、あなたたち、なんでこんなひどい真似、できるのかしら?」キッ

白衣男(……うん?)

白衣男「あー、そうか、そういうことな。人格や言葉遣いも微妙に変わっちまってるのか」

食蜂「……え?」

352: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/15(月) 23:47:23.77 ID:1nuvRONA0
白衣男「つーか、あれだぁ。そういう真似ができるなら、最初からやってりゃ良かったんだ」

食蜂「……何を、言ってるの?」

白衣男「一度そういう能力があると知っちまうとさぁ。いくら忘れようとしても頭に引っかかるんだよなぁ」

白衣男「リアルな読心術なんてもんは、人様の社会には必要ないってのによぉ」

食蜂「……またそういう話? 読心術なんて私には」

白衣男「あぁ、お嬢ちゃんの頭の中ではそういうことになってるみたいだがな」

白衣男「結局、あんたの存在も能力も、他人の手にあればいつ破滅をもたらすかわからない代物だ」

白衣男「つまり存在自体が迷惑なの。つってわかるかなぁ? わかんねえだろうなぁ」

食蜂「……な、何をさっきから、わけのわからないことを」


???「つまり、大人しく我々に有効活用されることだけが――」

食蜂「……、」バッ

木原「学園都市で君に求められてる唯一の存在意義ということだよ、食蜂操祈くん」コツ

食蜂「……あ、あなた、誰?」

354: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/16(火) 00:04:45.09 ID:5tkVJKG40
木原「やれやれ、悲しいな。庇護者の顔も覚えていないとはね」

食蜂「あなたが、庇護者ですって? 私には、上条さん以外にそんな人いないわよ」

木原「……カミジョー? はて」

食蜂「それより早く私を解放して! あの人、絶対に心配してるんだから!」

木原「……君を心配? ははは、馬鹿も休み休み言いたまえよ」

食蜂「だ、誰が馬鹿よぉ! あの人は、本当に心から私のことを――」

木原「困った小娘だ。我々を散々振り回しておいて、その上またさらに混乱させようというのかねぇ」コツコツ

研究員B「あ、しょ、所長! そのダイヤルは――」


――グイッ!


食蜂「――ひッ!? ああああっっっ!!!」バチバチバチンッ


研究員B「暴走を抑えるための……って」

木原「心理掌握、か。気分屋の小娘が持つにはまっこと過ぎた力だよ。そうは思わんかね?」カチン

食蜂「……あ゛っ……はっ!」ガクン

木原「やはり、まどろっこしい真似はせずに最初からこうすれば良かったのかな」ハァ

355: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/16(火) 00:21:18.05 ID:5tkVJKG40
食蜂「……うっ、か、上……じょ……さ……」ピクピク

白衣男「出来る限り、洗脳終了まで苦痛は与えない方向じゃなかったんで?」チラ

木原「脳波の波形を見る限り、さほど深層意識に変化はない」

木原「さて、ではもう一度」

食蜂「あ……や……」


――グイッ!


食蜂「――ひっ!」ギュッ


食蜂「…………ぅ?」

木原「なんてね、冗談に決まってるだろう?」ニコッ

食蜂「……あ……あぁ」ブルブル

白衣男(……一発で刷り込みやがった。手慣れてやがるなぁ、胸糞――)


――ヴーーッ、ヴーーッ、ヴーーッ!


研究員A「な、何だ!? 警報!?」

木原「……まったく、無粋な連中だな」フゥ

白衣男「で、どうします?」

木原「技術者たちは引き続き洗脳を進めろ。他は侵入者の駆除だ、迅速にな」クルッ

357: 乾杯 ◆ziwzYr641k 2013/07/16(火) 00:39:29.81 ID:5tkVJKG40
――物資搬入路前


――チュインッ!


小隊長「押し込められるぞ! もっと弾幕を張れ!」チラッ

小隊長「――とっ、やっと増援のご到着か!」

猟犬D「敵は!? 警備員(アンチスキル)ですか!?」

小隊長「あぁ、見たところ能力者はいないみたいだが、連中フル装備だ。本気で潰しに来てるぞ」

猟犬E「硬化ゴム弾とはいえ、まともに当たれば骨が砕ける。警戒しろ」


猟犬F「……ん、あれ、俺、目が疲れてるのかな?」ゴシ

猟犬G「何だ? 何か妙なものでも見えたか?」

猟犬F「……いや、あそこのビル。たくさんの傘が飛んでいるように――」



――ビルの屋上


――クルクルクル


黒子「……お、お姉様。本気でこれ、やるんですの?」ヒク

御坂「――銃弾や鉄骨の雨ばら撒くのに比べりゃ、可愛らしいもんじゃない?」スッ


その4へつづく
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[ 2016/02/17 23:30 ] 読み物 | TB(0) | CM(0)
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